読んだよ
注意:ネタバレしてると思います。 長いです。
いきなり結論ですが、
凄い面白かったです。
旅行中のホテルのフロントのロビーにこれが掲載された号の文藝春秋が置いてあって、待ち時間に何気なく読んでいたのですが、
あまりにも面白くて部屋に通されたあともロビーに戻り、続きを読んでしまいました。
私は昔この作品が芥川賞を受賞したときに、
「あたしの人生って、コンビニのように変化がない毎日で退屈!人からもコンビニのように値定めされたり便利な存在なの?!」
みたいな話なのかと勝手に思っていたのですが、(芥川賞なめすぎだろ、私)
正に180度私の思っていた内容とは違う話でした。
えぐられました。胸を。
ダメなことにもいろいろな種類があって、
この種類のダメはダメだけど普通のダメだからまぁダメだけどセーフのダメで、
でも、こういう種類のダメは普通でないダメだから本当にダメなやつでアウトのダメであり、もう存在すら許されない。
しかしそれは単純な罪の重さでのダメさの話ではない。
大切なのは普通であるか否かだ。
何言ってるんだコイツ?という感じでしょうが、私なりのこの本の感想です。
つまりはそういうことなのだと思いました。
主人公の軸になる価値観は「普通に見えるように振る舞うこと」。
主人公の行動規範はコンビニという存在そのもの。
白羽くんがマジで最悪な男で、
むしろこの最悪具合は作者が露悪的に書いているのだろうなと思いました。
そしてこのマジ最悪男に、まるで無価値のゴミのように扱われる主人公を通して、作者はある種の自虐をしているのか、とも。
そもそも「普通でない」ことのコンプレックスということ、そのもの自体が理解できない人もいるのでは、と思います。
感覚としてはわかるけど感じたことはないという人は多いと思います。しかし、感覚としてもわからないという人もたまにいらっしゃいます。
(アラフォー以上の方だと結構いる気がします。完全に私的な感覚だけど。)
あるいは、そのコンプレックス自体は理解できても、なぜそこまでして周囲の価値観に迎合しようとするのか理解できない人。
その違いは、感受性とか経験値とかそういう問題ではなく、
この本の言葉を借りれば単純に
「あちら側」か「こちら側」かの話なのだと思います。
そして地球上の誰もが「普通」の側に居たいということも。
選評した作家さんの中に「笑いながら読んだ」と書いてあった方がいらしたのですが、
その方は間違いなく普通の側の方なのでしょう。
主人公がコンビニバイトという職に出逢えて良かったです。